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新人研修のノウハウ
人材育成のノウハウ

企業型アクティブラーニングでの受講者評価

2021.12.14

連載【オンライン新人研修の効果的実施策】 第3回

長年にわたり多くの IT 系企業で新人研修の講師をつとめ、2020 年・2021 年にはオンラインでの新人研修を成功させた矢吹哲也講師が、近年の新入社員の特徴、企業型アクティブラーニングなどオンライン新人研修の効果的実施策を解説します。

第1回 研修講師から見た、新入社員の特徴と変化 では、過去4年を振り返り、研修要素に絡めた新入社員の考察をおこない、第2回 オンライン新人研修におけるアクティブラーニングの導入と運営 では、新入社員自らが「自主的、自発的、能動的」に行動ができるようになる施策について解説しました。

最終回の第3回では、受講者をどのように評価していくかを解説します。

アクティブラーニングにおける評価のプロセスと考え方

個人評価を適切に行うために、研修の開始時から終了後まで、次の3ステップにわたって評価を行っていく。評価にあたっては定量化を図りながら測定し、都度分析を行うことが重要である。

① 研修開始時「初期状態の把握」
② 研修実施中に行う「経過状態の把握」
③ 研修終了時「最終状態の把握」

技術系の研修では、研修コース単位に「テスト」を導入し、受講前の「プレテスト」と受講後の「ポストテスト」の点数差異をもって知識習得度合いを測定することが多いが、ここで得た数値にあまり大きな意味はない。全体評価の数パーセント程度のものだととらえ、重きを置くことは避けた方が良い。

大切なのは、研修受講において、新入社員一人ひとりがどのように変化したかの「成長のプロセス」を定量的に記録・分析していくことにある。

第二回で申し上げたとおり、企業型アクティブラーニングは、「積極性・能動性を高める学習スタイル」である。その最大の目的は、自己肯定感を高め、ひいてはコミュニケーション力向上に繋げていくことにある。自己肯定感、コミュニケーション力が高まれば必然的に集中力は高まり、研修成果へと繋がってくる。

それでは、この成長プロセスをどのような視点で記録・分析していくかを、評価のプロセスに従って順に解説していこう。

評価のプロセス:① 研修前 初期状態の把握

研修開始時の「初期状態の把握」では、新入社員個人個人の入社直後の状態を把握するために、二つの方式を使う。一つは基礎知識を測るプレテスト、もう一つはパーソナルスキルを測るアンケートである。

基礎知識を測るプレテスト

プレテストはよくあるテストで、事前に基礎技術を理解しているかを把握するために実施し、彼らの保有資格や経歴とマッチングし分析することで個人と全体の現況を把握する。

パーソナルスキルを測るアンケート

アンケートでは、パーソナルスキルについて共通認識を持つための「スキル定義項目」を準備し、その定義に基づきアンケート形式で現況を把握する。

自己申告となるため信憑性が疑われるが、最初は構わない。大切なのは「スキル定義項目」を公開し、いつでも自己チェックができる環境においてフォローやコーチングを適切に行い、自己肯定感を徐々に高めることである。また、研修の中間報告や終了後の実施報告においてもこのスキル定義項目に基づいて報告することで、報告内容に一貫性が保たれる。

なお、当社ではパーソナルスキルを下記のように定義付けし分類している。

パーソナルスキル
(1)メンバーシップ(2分類:チームワーク、報告・連絡)
(2)リーダーシップ(5分類:リーダーマインドとビジネスマインド、計画立案と職務規定など)
(3)コミュニケーション(7分類:情報の収集と分析、情報の選別と活用など)
(4)ネゴシエーション(4分類:交渉の原則の実践、交渉の準備など)
(5)創造的実践(2分類:問題発見力など)

評価のプロセス:② 研修中 経過状態の把握

次に、研修実施中の「経過状態の把握」についてである。基礎技術の状況把握については、コース単位のポストテストや、演習の進捗状況、品質チェック状況などを適時収集し、分析を繰り返していく。

パーソナルスキルの状況把握については、中間時点ですでにチーム主体となって活動を行っているため、講師はチームファシリテータを巻き込み、共にメンバー全体の状況把握と対応を進めていく中で、日々「スキル定義項目」に基づきチェックし記録していく。

なお、日々の記録の際に講師の主観が加わることは致し方ないが、それを取りまとめた中間報告などでは、研修関係者を交えて複数人で相互に確認(360度評価)し補正することでギャップをなくし、評価の精度を高めていくことが必要である。

なお、評価を行う視点として、下記のような6段階のレベル定義を用い、担当講師の所感文も併せて整理していく。

評価に用いるレベル定義
Level-0  行動ができていない(行動の仕方を知らない、知識がない)
Level-1  受動的行動である(指示があれば行動できる)
Level-2  通常的行動である(決められた事だけは独力で行動できる)
Level-3  能動・主体的行動である(ルールの中で自身の新たな工夫や発想のもと行動できる)
Level-4  創造・課題解決的行動である(PDCAサイクルを回し目標を達成するための行動できる)
Level-5  パラダイム転換行動である(既成概念にとらわれず新たな状況を作り出す行動できる)(参考)カオナビ「人事用語集」 6.コンピテンシー面接の評価基準

評価のプロセス:③ 研修後 最終状態の把握

「①初期状態の把握」から始まり、「②経過状態の把握」を経て、研修後に「③最終状態の把握」を行い整理する。研修も終盤に差し掛かると、直接指導にあたっている講師や研修関係者は、新入社員個人個人がどのように成長しているかを自然と把握できているかと思われるので、主観的評価も客観的評価も困難ではない。

ここで大切なことは、新入社員個人個人が自らを振り返り自己評価し、今後の目標を設定することにある。もう一度、研修前に実施したパーソナルスキルのアンケートを実施し、自己の成長を認識させ、自己肯定感を高めていくように仕向けていくのである。

なお、最終評価においても中間報告時と同様に360度評価を行い、評価点の精度を高めることが重要である。必要に応じて評価項目に重みづけや加点を施すことも可能である。たとえば、チームファシリテータは「リーダーシップ項目」に加点する、というようなことだ。チーム内で選出されたチームファシリテータの活躍が、企業型アクティブラーニングの成功に大きく寄与していることを考えれば、十分に論理的なものであろう。

終わりに

三回にわたり「オンライン新人研修の効果的実施策」を述べてきたが、今回紹介した、定量的に段階的に受講者評価を行う方法は、オンライン研修のみならず通常の集合形式においても有効な策と考える。また、新入社員以外のマネジメント系研修でも、受講者のパーソナルスキルを計測するには有効な策と思われる。

オンライン研修はすでに数々の実績があがり、定着もしてきている。メディアを通じ、多々なる実施策の記事も拝見されるが、一度立ち止まって整理して、次の研修施策を検討する必要もあるかと思われる。ぜひ当連載をお読みいただき、活用していただけると幸いである。

連載バックナンバー
第1回 研修講師から見た、新入社員の特徴と変化
第2回 オンライン新人研修におけるアクティブラーニングの導入と運営

■この記事を書いた人
矢吹 哲也 IT研修講師。豊富な実践経験をベースに、新人研修をはじめ多くの企業研修を手掛ける。スキル標準の導入構築コンサルタントとしても活動。

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