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新人研修のノウハウ
人材育成のノウハウ

オンライン新人研修におけるアクティブラーニングの導入と運営

2021.11.16

連載【オンライン新人研修の効果的実施策】 第2回

長年にわたり多くの IT 系企業で新人研修の講師をつとめ、2020 年・2021 年にはオンラインでの新人研修を成功させた矢吹哲也講師が、近年の新入社員の特徴、企業型アクティブラーニングなどオンライン新人研修の効果的実施策を解説する連載です。

 「第1回 研修講師から見た、新入社員の特徴と変化」では、過去4年を振り返り、研修要素に絡めた新入社員の姿を考察しました。

今回は、この考察を踏まえて、新入社員自らが「自主的、自発的、能動的」に行動できるようになる施策、すなわち「オンライン新人研修におけるアクティブラーニングの導入と運営」について解説します。

学校教育におけるアクティブラーニングとは

講義型学習のデメリット

アクティブラーニングとは、現在、学校教育で注目されている学習方法で、文部科学省が平成29年に公示した「新しい学習指導要領の考え方」にも記載されている学習方法の1つである。

学校教育は、教師が生徒に対して一方的に講義をする「受動的な学習スタイル」で行われているケースが一般的である。これはこれで必要ではあるが、コマという時間枠の制約の中、教師のスキルに依存する部分が多くなる。

また、学習効果の面で考えた場合、教科内容に興味を持っている生徒には効果があるが、そうでない生徒には苦痛の時間となり効果が下がる。結果、クラス全体を見た場合、理解の度合いにバラツキが生じ、生徒個々の補習に非常に時間が掛かる場合がある。

 

 

能動性を高めるアクティブラーニング

一方、アクティブラーニングは、「受動的な学習スタイル」とは真逆で、生徒間でのグループディスカッションやディベート、グループワークを多く取り入れるなど、「積極性・能動性を高める学習スタイル」である。

読者の皆様も幼少の頃から入社するまでの人生を振り返ってみていただきたい。自分が興味を持った事柄に対しては、他人から指示を受けることなく積極的・能動的に行動したのではないかと思う。そして、親兄弟、友人、先輩、後輩などとのコミュニケーションから生まれるものも大きかったのではないか。

アクティブラーニングを用いると、生徒間でコミュニケーションを取りながら、お互いに影響力を高め合い、教科内容を楽しく興味が持てるようになり、ひいては総体的なスキルが高まるという効果がある。ただし、そこでは責任性はシビアには求められない。

以上が学校教育におけるアクティブラーニングである。

企業研修におけるアクティブラーニングとは

導入の経緯

企業の人材育成にアクティブラーニングが導入されるようになった背景には、社会の変化、求められる能力の変化がある。

従来の企業研修

これまでの社会では、指示されたことをいかにうまくこなすかが求められてきた。それにより研修スタイルも、講師やインストラクターが一方通行で、受講者に知識、技術を教える受動型のスタイルだった。

しかし、情報化社会が進み、知識・情報・技術の変化するスピードは上がり続け、質の高さや豊かさを重視した成熟社会に移行した結果、従来の組織や手法を前提としたスタイルでは時代に適応することが難しくなってきているのが現状である。

社会の変化とアクティブラーニングへの要請

社会が多様化し、テクノロジーが急激に発展することで、その場の状況や相手の価値観を理解しながら自分の考えをまとめて発言したり、相手にふさわしい表現で伝えたり、答えのない課題に向き合い、他人と協調しながら解決するなど、積極的・能動的なスタイルが求められるようになった。

アクティブラーニングでは、受講生自らが能動的に活動することによって、認知的、論理的、社会的、教養、知識、経験などの汎用的能力の向上や育成を目指す。

 

新人研修がめざす成果とアクティブラーニング

企業では雇用、収益構造、事業構造が関係し、社員に責任性が求められ、その責任を果たすべく行動を取らなければならない。当然非常に大事なことであり、シビアな世界である。

新入社員研修では、企業人としての意識とスキルを高めるべく、多々なるカリキュラムにて研修を行っていくが、最も重要なのは、受講者自身に自らの特性を理解させ、その特性を引き出し、ナレッジ化を後押しすることである。その効果的な施策として「企業型アクティブラーニング」を取り入れ、受講者が主体となって相互にコミュニケーション力を高めていくことが肝要だ。

最近企業内で、「若年層のコミュニケーション力向上」を課題としている企業が増加傾向にあるが、コミュニケーションの本質を理解したうえで研修施策を検討する必要があるのではなかろうか。

企業型アクティブラーニングの考え方 4つの活動カテゴリ

基本的な考え方は「学校教育におけるアクティブラーニング」と変わりないが、企業研修でよく使用される用語や考え方に置き換え、4つの活動カテゴリにまとめた。

A:基礎スキル活動
B:コミュニケーション活動
C:応用的活動
D:創造的活動

4つの活動カテゴリはそれぞれ独立した活動ではなく、アクティブラーニング実施時はこれらの項目を紐づけてシナリオを作成し、運営していく。なお下図内容は一例で、詳細は省略させていただくことをご了解願いたい。

この考え方を企業内で取り入れ、研修開始時のオリエンテーションで、受講者に理解を求め、意識付けするところからスタートする。

活動はチームの体制を取り、組成したチームはよっぽどのことがない限り、メンバー変更をせず最後まで完走させるのがポイントである。その意図は後述する。

実践方法① 研修開始時に伝えるべきポイント

企業型アクティブラーニングを成功させるためのポイントは、受講生、講師、研修関係者全員の意識合わせ・合意形成にある。

(1)円滑なコミュニケーションが重要であること

IT企業の場合、システム開発・保守の仕事はサービス業であり、顧客、協力会社、上司、先輩、同期、後輩とともに、円滑な意思疎通のためにコミュニケーション力を発揮することが大切であることを伝える。講師共々常に意識して行動していくよう合意に導く。

(2)常に職場意識をもって活動すること

研修会場や Web 会議システムの場は「職場」であり、常に職場意識をもって活動していくことを伝える。ただ、Zoom での活動は、時に孤独感に苛まれることがある。講師も含め、受講者全員で話しやすい雰囲気作りを心掛け、助け合っていくよう合意に導く。

(3)Face to Face のコミュニケーションが大事であること

受講者全員とコミュニケーションを図りやすくするために、就業時間中の Web 会議システムのカメラは常に ON の状態とする。実際の職場でも Face to Face のコミュニケーションが非常に大事であることを合意に導く。

(4)社会人への意識転換を図ること

言葉が持つ影響力は大きく、時に意識転換を阻むこともある。学生から社会人へ早期の意識転換を図るために、学校用語を排除し、研修期間中は下記の通り、呼称を統一し合意に導く。

① ×先生      →  〇講師、~さん  ※企業では先生という呼称は使わない
② ×生徒      →  〇受講者、新入社員、~さん  ※企業では生徒という呼称は使わない
③ ×授業      →  〇講義、研修  ※企業では授業という呼称は使わない
④ ×教科書   →  〇テキスト
⑤ ×教室      →  〇研修室、会議室
⑥ ×班         →  〇グループ、チーム

実践方法② チーム編成・活動のポイント

実際に能動的な学習を実現するには、研修実施の際の細やかな設計と配慮が必要である。

(1)チーム活動であることの周知

研修開始日から最終日までは、原則、チーム活動(プロジェクト活動)とし、受講者全員で、自主的・積極的・能動的に活動してもらう旨を伝え、合意に導く。

(2)チーム内のメンバー変更はないことの周知

チームは5名から6名で1チームとし、研修最終日までメンバー変更をせず完走することを伝え合意に導く。メンバー変更をしない理由は、職場の臨場感を体感してもらうことにある。

会社では一度職場に着任したら、所属するチームの上司・先輩・メンバーに苦手な人が存在したとしても、人の取捨選択はできない。それが会社であり、上手くコミュニケーションを図りながら長期間にわたり業務を推進していかないといけない。

そのコミュニケーションの取り方を現実的に体得してもらうことが目的である。受講者全体の交流については、別途施策を考えればよい。

(3)チーム編成の基準を明確に周知

チーム編成については次の基準を参考にバランスを取る。またこの基準は隠すことなく受講者全員に伝え合意に導く。

① 情報処理資格の取得状況
② 出身学部や IT 開発経験の有無
③ 基礎知識をはかる事前テストの結果
④ パーソナルスキルアンケートによる自己申告データ
⑤ ビジネススキル研修(マナー研修など)での活動状況から見た個々の行動特性

(4)Web会議システムのブレイクアウトルーム機能の活用を周知

チーム活動は Web 会議システムのブレイクアウトルーム機能(参加者をグループにわけて会議を行う機能)をフル活用し、推進していくことを伝え合意に導く。

Web 会議システムによっては機能制限があると思われるが、Zoom や Webex のブレイクアウトルームには「参加者によるルーム選択を許可」する機能がある。その機能を活用し、チーム活動中は各ルーム間を自らの意志で自由に行き来できるようにする。

その環境に、コミュニケーションを促す施策を絡めることで、総体的なコミュニケーション向上につながる。

実践方法③ ファシリテーションのポイント

ファシリテーション(facilitation)とは会議や研修、ミーティングなどさまざまな活動の場において、良質な結果が得られるように活動のプロセスをサポートしていくことである。  「司会がその場を進行する」ことを想像される方もいると思うが、本質的には異なり、それはファシリテーションの一部にしか過ぎない。

チームメンバーが全員で問題や課題を解決するため、認識の一致を確認したり、相互理解を深めたりするためのサポートをして、成果を生み出す手法がファシリテーションである。

企業型アクティブラーニングではこの手法をチーム活動に取り入れる。このことは研修開始時に伝え、合意に導く。

以上のことを踏まえ、役割を決定していく。

(1)クラスファシリテータ

担当講師は「クラスファシリテータ」として全体のファシリテーションに徹し、クラス全体を牽引・サポートしていく。

もちろん、講義やインストラクション、チーム活動のチームサポート、チームファシリテータ(後述)のサポート、コーチング、個人評価もおこなうことを伝える。

(2)チームファシリテータ

チーム毎にチーム内で「チームファシリテータ」を選出する。基準は特に設定しない。

資格保有者、IT 経験者、出身学部、年齢、性別問わず、受講者がファシリテータとして「いいな」と思う人を選出してもらう。なお、チームファシリテータもチームメンバーと一緒に研修最終日まで完走することを伝え合意に導く。

ファシリテータはリーダーではない

ちなみにチームファシリテータは俗に言う「リーダー」などの管理職ではない。チーム全体をより良い方向に導いていく、チーム内のファシリテーションを担う役割であることを伝え合意に導く。

個人評価項目を明確に開示する

チームファシリテータは個人評価項目を別途設けることを隠すことなく伝え、合意に導く。チームファシリテータのモチベーションを向上し、役割を全うさせるためにも、プラスアルファの評価をする旨を率直に伝える必要がある。

ファシリテータミーティングを開催する

適時チームファシリテータを集めての「ファシリテータミーティング」を実施することで、チーム内におこっている問題や課題、他チームとシェアしたい事項などがチームファシリテータ間で情報共有でき、モチベーション向上の相乗効果につながる。さらに、ミーティングで得た情報を自チームの活動に活かすことで、チームの活性化につながる。

(3)チームメンバー

チームメンバーはチームファシリテータに協力し、自主的・積極的・能動的にチーム活動に参加し、チームを盛り上げていくよう伝える。特に IT 初学者に対しては全員でフォローしていくように伝え、合意に導く。

まとめ

連載第2回目は、企業型アクティブラーニングの導入と運営について述べさせていただいた。ここでは人材育成担当者や担当講師の活動は大きくは取り上げていないが、担当講師が持つべき必須スキルを述べるとするならば、全体を牽引するマネジメント力受講者個々に対するコーチング力の2つがあげられる。

この2つに加え、技術力が兼ね備えられているとなお理想的ではあるが、研修カリキュラムの内容と難易度によって変化する。ちなみに、文書内で「合意に導く」を多用しているのは、「受講者が疑問点をなくし理解する」と捉えていただけると幸いである。

次回(連載第3回)は、企業型アクティブラーニングでの、受講者評価について考えていきたい。

■連載一覧

第1回 研修講師から見た、新入社員の特徴と変化

第2回 オンライン新人研修におけるアクティブラーニングの導入と運営(本記事)

第3回 配属先に継承する受講者評価の視点(予定)

■講師紹介 矢吹哲也
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